第8章 復帰命令
「脳震盪の患者さんですか?」
粧裕ちゃんしか、思い当たらない。
「はい、そうです。
それと、僕には敬語なんて使わなくて良いですよ。
僕(看護師)にまで敬語使う人居ないんで、なんかくすぐったくて…」
この人は、話しやすいタイプの人かもしれない。
月くんと、どことなく似ている部分がある。
どこが、と問われても答えられないけれど。
「分かった、双葉くんもタメ口でいいよ」
「そんな、僕は看護師ですから」
医者と看護師なら、医者の方が立場上は上である。
「そう、まぁいいよ。
強要はしないから。
その患者さん、その後は良好?」
「はい、もう大丈夫だと聞いてます」
「良かった…」
これで、月くんから笑顔を奪うことは恐らく無いだろう。
「ご家族なんですか?」
「ううん、友達の妹なの」
友達、と言う単語は未だに使い慣れない。
「そうなんですか」