第8章 消えた想い
「しおちゃん?」
私はまなくんに抱きついた。
「好き…」
私の醜い心を洗い流すように、
そして、自分の本当の想いをどこかに捨てるように、
そっと、キスをした。
「え、」
頬を赤く染めたまなくんに、
「しおちゃんじゃなくて、詩織って呼んで?」
今までのことをなかったことにしたい。
私は目に溜めた涙をこらえきれなかった。
「分かった、しおちゃ…、いや、詩織。」
まなくんは私の気持ちを理解してくれたのかもしれない。
「俺が守るから。」
そう言って強く抱きしめてくれた。
不思議と学に罪悪感は覚えず、
私の中で何かが変わった瞬間だった。
「学、ありがとう。」
笑顔を見せた。
初めて、心から1番の笑顔を。
私はやっと心の束縛を解き放てたんだ。
自分の犯した罪に気がつくこともなく。