第10章 天然vs口巧者
「そうねえ・・・人を振り回す事に関してはガイ先生に敵うものはないわね。リーくらい?弟子だけに?」
「・・・・大変興味深いですね、そのガイ先生という方」
「素晴らしい方ですよ!牡蠣殻さんもきっと好きになります!」
「それは・・・どうでしょうね。あー、貴方がそう言われるならそうなのかもしれませんね。会ったことがないのでわかりませんが。しかし貴方達を見ていれば良い先生だというのはわかりますよ。先生にとってもさぞ自慢の教え子でしょう、貴方達は」
「自慢の教え子なんてそんな・・・ッ!ボクたちなんかまだまだです!」
「・・・おい、お前と一括りにして俺達までなんか呼ばわりは止めろ」
「ガイ先生に自慢されてもねえ・・・」
「反って周りに退かれる絵面しか思い浮かばないんだが何でだ?」
「マイト・ガイマジック?」
「またまた!二人とも照れてますね!?ホントはとっても嬉しいんでしょう!?ボクは嬉しいですよ!?嬉しい気持ちを素直に表すのは恥ずかしい事なんかじゃありません!さあ!!」
「・・・・・・さあって何だ?言っておくが、俺は今この上なく素直な気持ちで話しているぞ」
「照れるってより困惑っていうか、困惑ってより迷惑っていうか・・・・」
「どうしたんです二人とも!急な反抗期に見舞われちゃったんですか!?いいですよ、どんなにこじれた二人でもボクはドンと受け止めます!さあ!!!」
「だから何なんだ、そのさあっていうのは!止めろ!何か鬱陶しい!」
「こじれてるのはリーとガイ先生でしょ?アタシは受け止めないけど」
「テンテン!ボクはともかくガイ先生をそんな風に言っちゃ駄目です!重症ですね。重度の反抗期です。黒帯クラスですよ。プラチナカードです。でも大丈夫!ガイ先生とボクがついてますよ!さあ・・・うぶ・・ッ、ま、また殴りましたね!ネジ!反抗期とは言え許しませんよ!」
「うるさい!少し黙れお前は!」
「止めなさいよ、二人とも!牡蠣殻さんに呆れられるよ・・・・・牡蠣殻さん?」
「・・・・あれ?」
牡蠣殻の姿がない。
暗い路地には三人以外の気配がまるで感じられず、ただカレー臭が未だしつこく漂うのみ。
三人は顔を見合わせた。
「・・・・・これは・・・・マズイだろ・・・・」