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連れ立って歩く 其のニ 砂編 ー干柿鬼鮫ー

第17章 火影の雑談


木の葉の夜々中、火影の執務室に仄かな灯りが灯った。

表は濃い闇、昼賑やかな里人も皆寝入って、木の葉はシンとした深更に包まれている。

綱手は溜め息を吐いて、手元の書類を卓に投げ出した。

「夜半にすまないな」

冷え込みだした部屋に、先程シズネが点けていった暖房から灯油が温かく匂いだして眠気を誘う。

「五代目の呼び出しとあっちゃ是非もないですよ」

目の前にはカカシ。いつに変わりない眠たげな顔で漠然とした視線を向けて来る。
後ろ手を組んで僅かに足を開き謹聴の姿勢をとってはいるが、例によって食えないざっかけなさだ。

「ふ。雑談と思って聞け。・・・暗部の動きが気になる。もっと言えば根、ダンゾウだ」

目頭を指で押さえるように揉んで苦笑を漏らし、綱手は疲れと苦さの滲む声を出した。

投げ出された書類をチラと見て、カカシは肩をすくめる。

「雑談ですませるにはちょっと物騒な名前が出ましたね。そんな話、俺にしちゃっていいんですかね?」

「だから雑談だ。ここだけの話にしてくれ。正直動きあぐねている」

「動きあぐねる?」

「磯に忌み血をもつ者がいるのは知っているか?」

「・・・忌み血ってのは凄い呼び方だなあ。まあ、知らないでもないですよ。しかし先の散開のとき磯を抜けたでしょ、その忌み血とやらの持ち主は」

「一度会ってみたかったのだが、散開のゴタゴタやら何やらで会えずじまいだった。藻裾と仲が良いらしいな?」

「さあ、あのちっちゃい彼女は兎も角、俺も会った事ないですからね、その人とは」

「牡蠣殻磯辺。藻裾同様波平子飼いの部下だ。波平の部下らしく覇気のない女だが、口巧者、逃げ巧者でもある。度々里を不在にしているが、意外に人望があったらしい。藻裾と違って参謀タイプのようだな」

綱手に目で促されたカカシは投げ出された書類を手にとった。

「て事なんかがコレに書いてある訳だ。あぁ、正直見たくないなあ。コレ見たらゴタゴタに巻き込まれるんデショ?違います?」

「さあな。巻き込もうにもどう巻き込むべきか・・・ダンゾウが欲しがっているらしい。この者の血を」

「忌み血を?」

「ちょっと前に国境で起こった大量の不審死体の件」

「ああ、ありましたね」

転がりだした話にカカシは用心深く目を細めた。


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