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【SS合同企画作品】autumn collection

第4章 松虫草 anotherstory


XANXASから敵対グループの頭の娘だと思われる女を少し監視した後殺せと命令が下った。女はまだ若い。だが哀れみの心などとうの昔に捨てていたスクアーロにとってはなにも苦ではなかった

張り込み数日目、殺すことを決めた。女はひとり暮らし。最高に楽な仕事だ。恐怖で声も出なくなったところを狙う
音もなく部屋に忍び込み部屋の扉を開けた

『っ!?』

ここまで計画通りだった。だがスクアーロはすぐに異変を感じ取った。女は抵抗する素振りを見せないのである

「ゔおぉい、俺が何しに来たかわかってんのかぁ」
『多分ね、私を殺しにきたんでしょう?』
「達者な口だな」
『残念ながら貴女が追っている組織と私は関係ないわ』

自分は組織に雇われた影武者だと女は言った

「随分見え見えな嘘だな。第一影武者は自分のことを影武者なんて言わないぜ」
『ふふっやっぱり?でもね、貴女すごく綺麗だからどうせ殺されるなら別に教えちゃってもいいかなって思ったの』
「はぁ?」

なんだか調子が狂う。こんな女にペースを乱されことに苛立ちを覚えスクアーロは一旦退くことにした


それからというもの、女の家を訪れる度ペースを乱されては帰る日々が続いた。いつの間にか任務終わりに女の家に行くことが当たり前になっていた

『ねえ、名前は?私は』
「教えねえよ」
『じゃあロン毛さんね』
「スクアーロだ!」
『わかったスクアーロ』

と会うたび自分の胸の中の何かが大きくなっていた

゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*

「おいカス鮫、お前が張り込んでる女はどうやら影武者らしい。本物は親父のところにいるらしいから今夜にでもカス共連れて潰してこい」
「ああ」

影武者だということがバレた。つまりそれはがこちらの世界にもう関わらなくてよくなるということ
スクアーロが下す決断は一つしかなかった


午後10時過ぎ、雨に濡れたまま彼女の家の前まで来た。優しい彼女は暖かい飲み物を勧めてくれたが俯くことしかできない

『スクアーロ…?』
「もう、ここには…来ない」
『なん…で?どうして?』

消えそうな情けない声しか出ない。力を振り絞り松虫草を渡した

「お前のこと…」

好きだ
だが伝えられない
俯いたまま飛び出した
最後に聞こえた愛しい声は秋の空に消えた




松虫草の花言葉
不幸な愛情
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