【SS合同企画作品】autumn collection
第1章 桔梗
「キンモクセイの香りがするね。実に雅だ」
『いいねぇ、季節感じるねぇ』
庭で花の手入れをしていた歌仙とは秋の訪れを感じながらゆったりとした時間を過ごしていた
「おい大将、こんなとこでサボってて大丈夫なのか?ありゃ長谷部の旦那そうとう怒ってたぞ」
『だーいじょうぶだーいじょうぶ。今回は今までで一番うまくすり抜けてきたからね!今頃へし部も主ぃ〜どこですかぁ〜なんて泣いてるんじゃない?アッハッハッハ「主」 ヒッ!』
ほーら見ろと薬研が囁き恐る恐る後ろを振り返ると目元に隈をつくりげっそりしている長谷部が笑みを浮かべ立っていた
「さぁ行きますよ」
『やだやだ!雅な時間が!!』
ジタバタ暴れるの首根っこを掴み 長谷部はつかつかと部屋に戻って行った
゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*
「主。これは何ですか」
長谷部が指を指す先には山積みになった資料が机いっぱいに広がっていた
『はいはいやるよ、やりゃいいんでしょー。まったく。へし部もこんな堅苦しい書類とにらめっこしてないで秋の美を感じればいいのに』
「はぁ、わかりました。では主のお言葉に甘えて少し散歩してきます。俺が戻るまでにこの資料の山を半分にしていなかったら今日の食後の甘味は抜きです」
『そ、そんなぁ』
この世の終わりが訪れたような顔をして崩れ落ちるを横目に長谷部は部屋から出ていってしまった
『なんだよ!長谷部のばーか!頑固親父!センター分け!もう嫌い!………………嘘好き……』
やりますか、と呟きお茶をぐいっと飲み干しは筆をとった
゚・*:.。.*.:*・゚.:*・゚*
「ただいま戻りまし…た…」
部屋に入るなり長谷部は目を丸くした。つい先程まで山積みだった資料が残り数枚になっていたのである
『あとちょっとで終わるから』
「主…本気を出せばこんなに出来るんですね」
『まあね!』
得意げな顔をするを優しく見ると長谷部は一輪の桔梗を差し出した
「散歩の土産です。どうぞ」
『へし部に美的センスがあったなんて…』
「なっ、俺だってありますよ!誰かさんがサボったりしなければもっと感じられたかもしれませんね!」
『終わったんだからいいでしょ!』
二人は顔を見合わせて笑うと居間に向かって歩いていった
今夜の甘味はあんみつだ