【ハイキュー!!短編集】Step by Step!
第1章 君のとなり【菅原孝支】
初めて彼女を見たのは、高校一年の春。
県大会一回戦目で早々に敗退した俺たちは、ついでに女子バレー部の応援にやって来た。
烏野高校は、男女共に決して強いチームではない。
女子バレー部も二回戦目で強豪校にあたり、かなり苦戦していた。
選手交代のホイッスル。
入れ替わりでコートに立ったのが、彼女だった。
チームの中では小柄な方で、華奢な体格。
ポニーテールに結った長い髪。
スラリと伸びた手足に色白の肌。
緊張しているのか、何度も深呼吸をしている。
そして
彼女は俺と同じセッターだった。
ピンチヒッターの二年か三年かな?と考えていると、横で見ていた大地が驚いて声を上げる。
「野村…!?あいつ出るのか…!?」
驚いたのは俺の方だ。
「大地、あの子知ってんの?」
「あぁ、中学の時同じクラスだった野村みなみ。あいつ、人一倍プレッシャーに弱いからなぁ、大丈夫か…?」
オロオロと心配そうに大地は彼女ーーー野村みなみを見つめた。
俺と同じ一年。
こんな崖っぷちの状況で交代に出されるなんて、きっとセンスのある選手なんだろうな、と試合に出られなかった俺は羨ましく思ってた。
だけどそんな期待とは裏腹に、彼女は大地の予想通り何度もミスをして、再びコートから下げられてしまった。
控え席に戻る彼女は、さっきよりも更に小さく見えて、ずっとうつむいたまま肩を震わせていたんだ。
頼りない背中。
折れそうなほど細い身体。
消えてしまいそうだ、と俺は思った。