第11章 笑顔――迅悠一
そのあと二人ともトリオン体になり、本部内を駆けていた
夏海の前から風間さんが歩いてきた
夏海も気づいたのか風間さんの後ろに隠れた
「何なんだ朝霧」
『迅が!』
「はぁ…………」
風間さんはため息をつき夏海の手首を掴むとそのまま俺の方に投げた
「ありがとう、風間さん」
俺は夏海の腕をつかんで歩き出した
『風間さんのバカッ!!裏切り者!!』
風間さんをバカ呼ばわりできる夏海を尊敬しながら夏海を引っ張っていった
『離せ!迅!』
「やーだ!」
『じゃ、離さなくていいよ』
いきなり大人しくなった夏海を見るため振り返った瞬間、夏海は掴まれている腕を切り落とした
「うわあああっ!!何やってんの!!」
『じゃあね!!』
笑ってそれだけ言うと夏海は走っていった
俺はそこまでして逃げることに傷つく反面、最後に俺に向かって笑ってくれたことが嬉しかった
「ヤバイ…………にやける………」
支部に戻った迅がキモいと、言われるのは少し後のこと
そして、迅と夏海の戦いはまだ少し続きそうだ