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ワールドトリガー【中・短編集】

第38章 バレンタイン――烏丸京介


『うわー、すごい量だね』

京介の机に置かれたチョコを見る
私たちは付き合っているのだが、それをわかっていても京介を狙っている女子がいることに少し恐怖を覚える

「弟たちにあげるからありがたい」

『……あー、なるほど………』

既に京介の手には紙袋がある
そのなかにはこぼれ落ちそうなほどのチョコが入っている
京介はなれたように鞄の中からもうひとつ紙袋を取り出すと、机の上に置かれたチョコを無造作に放り込んでいった

『……やっぱりすごいね………』

「ボーダーだから、皆くれるんだよ」

ちょっと、ずれてることをいっている京介を軽く睨むと首を傾げて見られた

(そんな目で見ないで……!可愛い!)

そんなことを口に出せるはずもなく何でもない、といって自分の席に座る

頬杖をついて窓の外に見える本部を眺めた

(あーあ、これじゃ渡せないよ………)

あんな量のチョコをみてしまったら渡す気が失せてくる
それに、ひとつ増えただけでももって帰るのが大変だ



と、思っていたのだが

「夏海は俺にくれないの?」

帰り道、突然切り出した京介の顔を見る

『え?』

「だから、チョコ。付き合ってるんだし」

ん、と片手を出した京介の手に慌ててクッキーを乗せる

「ありがとう」

そう言うと京介は自分の鞄のなかにそれを入れた

『え?』

「ん?」

『……あ……てっきり、そっちの紙袋に入れると思ってたから………』

「ああ。夏海にもらったやつだから。これは俺が食べるし。あいつらには絶対あげない」

『あいつらって?』

「弟たち。あいつらはこれで十分」

京介は二つの紙袋を持ち上げて、薄く笑った
それにつられて私も笑う

「やっと笑った」

『え?』

「夏海、今日学校来てから元気なかったから」

『あ、ごめん。元気なかった訳じゃないんだけど……。
やっぱり京介はモテるんだなって思って』

「でも、俺が好きなのは夏海だけだよ」

『……う、うん………。……ありがと……』

恥ずかしくて俯くと優しく頭を撫でてくれた

「でも、バレンタインはなかなか良い。毎月あったらお菓子代が浮くのに」

『………んー、じゃあ、たまにお菓子作ろうか?』

「え、いいの?」

『うん。作るのは好きだから』

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