第2章 抱けない理由
「翔くん?帰ってきてたの?気づかなかった」
「おはよう七海、いい朝だね」
午前6時。今日は寝坊しなかったね。
俺は早朝ロケのため家を出る準備をする。
「行っちゃうの?」
玄関を出る俺の袖を掴んで見上げる七海。
「可愛いなぁ、もう」
気づいてるかな、上目遣いになってること。
「行ってきます」
唇に軽くキスを落とす。
朝だから控えめに、ね。
「むぅ」
「足りない?」
ほっぺをふくらます七海。
ハムスターみたいだ。
つん、と唇を突き出す仕草は要求してるんだね。
ちゅ、ちゅ、
玄関に鳴り響くリップ音。
七海はまだまだキスが下手くそ。
息継ぎのタイミングとか分からないウブ。
「じゃあね」
開発しがいのある子なんだ。