• テキストサイズ

【SS合同企画作品】 colorful days

第4章 秋の帰り道


秋。

夕方は少し肌寒くなる季節
私は家路へと向かう足を早めていた。



「理緒!」
聞き覚えがある声に私は振り向く。

振り向いた先には
はじめくんが自転車に乗っていた。


もう肌寒いのにまだ半袖姿の彼。
私はその姿を見てはじめくんらしいなと
口元が緩んだ。




「これから帰るんだろ?送ってやるから後ろ乗れよ!」

私ははじめくんの言葉に甘え自転車の後ろに座った。


自転車が走り出すと少し寒い風が吹く。



「寒かったらシャツん中に手入れていいからな!」
はじめくんは自転車を漕ぎながら私に優しい言葉をかけてくれた。


冷たくなった手をシャツの中に入れると
彼の体温が伝わる。
半袖なのにとっても暖かい。




「なぁ、理緒は高校卒業したらどうすんの?大学?それとも就職か?」



「私は地元の大学だよ。はじめくんは?」



「まだ決めてねぇけど、及川と東京の大学に行こうと思ってる。」


……高校卒業したらはじめくんに会えなくなってしまうんだ。


そう思ったら胸がチクリと痛んだ。


「……そうなんだ。部活と勉強、頑張ってね!」


「おう!理緒も勉強頑張れよ!」


私は急に寂しくなり後ろから抱きつきはじめくんの大きな背中に顔を埋めた。



「おい!いきなり抱きついてどうしたんだよ!?」
慌てて自転車を止めるはじめくん。



「ごめんね。……しばらくこのままでいさせて?」


はじめくんに寂しいとはとても言えない。



「お前が甘えるなんて珍しいな。」
はじめくんは私の頭を撫でてまた自転車を走らせた。



私の気持ちがはじめくんに伝わればいいのに。


好きだと直接言えない私は弱虫だ。


ずっとこのまま、時が止まればいいのに。


好きだよ、はじめくん。


私ははじめくんに抱きつきながら心の中で呟いていた。
/ 21ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp