第9章 Happy birthday!!③ 11月10日
「ごめんっ!遅くなった!!」
「部活お疲れ様。フフッ、待つのは苦じゃないから大丈夫だよ!」
そう言って笑って話す香坂はほんのりと鼻が赤い。
「大丈夫じゃねぇじゃん。ほらっ、マフラーしときなよ」
「二口くん、ありがとう!あったかいね。」
ふわりと柔らかい笑顔を見せられ俺も嬉しくてなってしまう。
香坂とは中学時代の同級生。
1ヶ月前に偶然帰りの電車が一緒になり家が近いから香坂の部活がある日だけ待ち合わせをして一緒に帰っている。
「今日ね調理実習でマドレーヌ作ったの。
二口くんにも作ったんだ!」
「サンキュ。部活終わりって甘いもん欲しくなるんだよなー。」
可愛くラッピングされたお菓子の袋を受け取ろうとすると彼女の手が触れる。
手袋もしてなくひんやりとしていた。
「手ぇ冷てぇし。手袋忘れたのか?」
「洗濯しちゃって。」
苦笑いする香坂に左の手袋だけ貸してあげた。
「ごめんね、二口くんの手袋も片方借りちゃって寒くない?」
「寒い……けどこうすれば暖かくない?」
俺は香坂の右手を握り自分の制服のポケットに突っ込んだ。
「う、うん……凄くあったかい。……けど照れちゃうね。」
少し赤らめた頬をみれば俺の事意識してるのかな、なんて思ってしまう。
今日は俺の誕生日だ。
彼女のお祝いの言葉が欲しい。
「あのさ、今日何の日か知ってる?」
「今日?……祝日でもないし……うーん、思い付かない。二口くん何の日なの?」
「今日は俺の生まれた日!」
「えっ!?今日誕生日なの?私、何もプレゼント用意してない…今からコンビニ行こう!」
「さっきお菓子貰ったからプレゼントなんて要らねぇよ。」
「でも二口くんには家まで送ってもらってるし、今日だってマフラーや手袋借りちゃったし……」
「気にしなくていいのに。……そんなに言うんだったら俺はこれがいい。」
俺は理緒の頬にキスをした。
「!!二口くん!?」
「ねぇ、俺の事祝ってくれねぇの?」
「あっ、……二口くん、誕生日おめでとう。」
「ありがと。」
真っ赤な顔の香坂の頬にまた俺はキスをした。