第35章 Holic Date.
でも、私は唯一人誰かの『花嫁』にはなれない。
なりたくない。
一人なんて選べない、選びたくない。
なら、なら、誰かを傷付けるなら、誰かが悲しむなら、私だけが辛くていい。
私だけが捨てられる悲しみを抱いて終わりにしたい。
「同じだな」
背中を向けて枕を抱いていた私の頭をなでながら矢巾先輩。
「俺もつむぎが誰かを選ぶ位なら、『みんな』の内の一人で良いわ」
矢巾先輩の切ない声に私は枕に顔をうめる。
「いつか…変わると良いな、お互い」
矢巾先輩は優しく私の結んだ髪を指ですく。
「はい」
変わる、のかな。
誰かだけに全てを捧げたい。一一そんな風に思える日がいつかくるのかな?
その時、矢巾先輩は側にいるのかな?
そう思いながら私は振り向いて、矢巾先輩に口付けた。
ただ、今だけは一一貴方だけの花嫁として。