第34章 Trip トリック!
「見たよ」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
私達は再び胡乱な声を上げる。
だってまさか知ってると思わなかったし。
「どこで?」
問えば矢巾先輩はにこっと笑う。
「教えてほしい?」
「あ、いいです」
お腹がすいてるせいか気が短くなっている。
「あっ、そ」
矢巾先輩は別段気にする風もなく歩き出した。
「ま、待って!」
やっぱり気になるし一人でご飯食べたくないし。
「ん?」
「お、教えて」
「えー?」
「教えてください!」
矢巾先輩は笑いながら振り向く。
ええい何て腹の立つ顔!
「じゃあ今度俺とデートの時、髪、二つに結んできて!」
ツインテールにすると顔が幼く見えるみたいだから前やって以来やってなかったけどまあ仕方ない。
頷く。
「よしっ!あ…石和さんならさっきいちごミルク買うって購買に向かってったよ」
矢巾先輩が教えてくれる。
「そうですか…」
なら温室で待ってればいいかな。
矢巾先輩は私の頭を無造作によしよしして今度こそ教室に帰って行った。
で、温室に帰ってきたのだけれどまだ石和部長はいない。
どうしたんだろう?
心配。
入れ違いとかかな。