第30章 SweetDate.
続けたかった。
プロになれるなんて考えてなかったけれど、せめて『子供』のわがままが許される内は。
この鍵盤で私は世界を創りたかった。
横目でロビーを見れば岩泉先輩が私を見ている。
静かに綺麗な目で。
胸が熱くなる。
そんな気持ちを込めてちょっと趣を変えて『トロイメライン』を一一。
ちょっとアレンジを入れながら。
最後に大好きな曲を。
大好きな天羽奏ちゃんの曲。
弾き終わったら席を離れ母にブレザーを返してもらう。
「一先輩ッ」
ロビーのソファに座っていた岩泉先輩に駆け寄る。
岩泉先輩が凝っと私を見る。
「ピアノなんか弾けたんだな」
私の頬に手を当て一先輩。
その手が冷たくて演奏で温まった私の頬に心地良い。
「小さい頃やってました」
焦がれた。
でも逃げた、夢。