第29章 のりしろ
だから私はデートしなきゃ。
でも……ちょっとだけ、大好きなあなたに寄り添わせて下さい。
肩を貸して下さい。
「石和部長、ノートとか、とっとく方ですか?」
昼は温室に行った。
部長は相変わらずルチィアーノちゃんと和菓子を食べていた。
「ん。有るよ多分。誰?」
「古文の上谷先生」
「まだ居るんだね。あるよ。ノート取れなかったのかい?多分内容変わらないから放課後にちょっと寄ってよ」
云って石和部長はニィと笑う。
「今日、だぁりんと、『デート』だろ?」
「そんな言い方やめて下さい!私は…私は薔薇の花嫁なんです」
だから、だから…。
ん。
でも…今日は、ね。
「木原くんは可愛いなぁ。きっと大丈夫だから」
部長が赤くなった私を抱きしめる。
そうだよね。
きっと大丈夫だ。
石和部長の言葉は私を安心させてくれる。
「はい。行ってきます。初音…」
ぶ、ちょう?
「どうした?」
部長が笑っている。
石和初音部長が。