第22章 【こぼれる回想と相合傘】
ここで話を聞いていた田中がぶわっはっはっはっと大笑いをした。
「ちょ、おめ、あいつ最初っからそんなんかっ。半分ボケにうまい具合にやられてんじゃねーかっ。」
「今でこそ稀にドサクサに紛れて俺をはめたりするけどさ、あの時本人は確実に何も考えてなかったな。」
「流石美沙だぜっ。」
「ちりめんじゃこって言う所が美沙さんだよなー。」
「木下、そこなのか。とりあえず縁下は半分ボケに救われたってことか。俺も初耳だったけど。」
まぁなと力は微笑む。そこへ2-4の誰かが縁下、と力を呼んだ。何、と教室の出入り口に目をやると
「兄さん。」
縁下美沙その人だった。噂をすればなんとやらでたちまちのうちに田中、西谷、木下、成田の4人が同時に吹き出す。
「ちょっ、先輩方何でいきなり笑(わろ)てるんっ。」
「気にしなくていいよ。」
力は野郎共をじろりと見てしかし愛する義妹には微笑む。田中と西谷が差別だっと意味不明な事を叫ぶが勿論無視だ。
「で、お前どうしたの。」
「雨降ってきたから。」
「え、あっ。」
力は窓の方を振り向いて驚く。降るとは思っていたが確かに外は既に雨模様だ。話し込んでいて気が付かなかったのか。
「私念のため傘持ってきたんやけど兄さんもし持ってへんのやったら一緒に帰ろかなって。」
「ああたす」
力がああ助かるよ、そうしようと言いかけた時だった。
「いよっ、お熱いねー。」
木下がヒューヒューとはやしたてた。尚悪いことにそこへ田中と西谷が続く。
「うおおおおおおっ相合傘だとおおおおおおおおっ。」
「力っ、ずりぃぞ羨ましいっ。」
「木下率先するなっ、田中と西谷は乗るなっ、成田お前は止めてくれよっ。」
「どうせ将来決まっているのに果たして止める必要があるのかなって。」
「ちょおっ成田先輩っ。」
叫ぶ美沙に成田は笑って流し木下はしれっと知らないふりに突入、田中と西谷は尚も縁下(力)許すまじと勝手に燃えている。
「兄さん、これ私が悪いんやろか。」
困ったように呟く美沙に力は大丈夫だよ、とうけあった。
「明日はまず木下からしめないとな。珍しく自分から燃料投下して、まったく。」
「木下先輩、頑張ってってとこやね。」