第16章 奇跡は起きない
しかし、それもほんのひと時のことで、次のボールデッドにはまたもや誠凛の選手交代。
『誠凛、選手交代です』
「え…?」
「はあ?何考えてやがる?」
不審に思ったのは私だけではないようで、永ちゃんも疑念の声を漏らした。
コートに戻ったテツ君は、早速ボールを手に持った。
そして、『消えるドライブ』。
だが、今更そんなもの通用するはずもなく、黛さんはそれについて行く。
続いて、そのまま『幻影のシュート』。
しかし、それも黛さんにブロックされ、洛山カウンターでコタちゃんがレイアップに行き、火神に止められるも、レオ姉に押し込まれる。
「押し込んだー!」
「ついに洛山逆転ー!!」
半ばヤケクソにも見えるテツ君のプレイを、私は不安を露わにした表情で見た。
「どーゆーつもりか知らないけど、戦力外の彼を入れたまま洛山とやろうなんて甘いんじゃない?」
「くっ…」
それでも何とか食らいつく誠凛。
第一クオーター残り三秒で、木吉さんがリバウンドを奪い取り、日向さんの3Pが決まり、終了。
「誠凛凌いだ!!」
「同点で第二クオーターへ突入だ!」
とりあえず…ではあるものの、洛山の人間である私は、隠れて安堵の息をついた。
「さっきの…うちが甘いんじゃなくて、そっちが舐めてんじゃね?」
「…ふーん」
日向さんの言葉にカチンときたらしいレオ姉は、少し不機嫌なままベンチへ戻ってきた。
他の四人も同じく、ベンチに座る。