第1章 序章
幕末 文久三年――
は江戸育ちの蘭医者の娘。
たった一人の家族である父、綱道は娘と離れ、京都で仕事をしていた。
綱道はを不安にさせぬよう、京都から文を送り連絡を取っていたが、ある日それがぱったりと途絶えてしまった。
心配になったは父を探しに京を訪れる。
が、そこでが目にしたのは――
血に餓えた化け物と、それを切り伏せる浅葱色の羽織――《新選組》の姿だった。
その後、新選組に保護されたはとある事実を知る。あの化け物は見てはいけないものだったのだのだ。
口封じのために殺されそうになったは、必死に京に来た理由を話す。
すると驚いたことに新選組も、とある理由で綱道を追っていると言う。さらに、数回しか面識のない新選組は綱道の顔がよく分からない、と。
そこで、新選組は娘であるを生かし、綱道を探す手がかりにすることにした。
こうしては彼等の秘密を話さないように屯所に軟禁され、殺伐とした環境の中で父の安否を心配する日々を過ごすことに――
――これは、戦乱の時を生きた一人の少女と志士達の物語である――