第3章 アンドロメダとペルセウス
ずっと小さい頃のオレは大きくなれば背が伸びて、手を伸ばせば星を掴めると思っていた。
あの頃よりずっと背が高くなったはずなのにオレは未だ頭上に広がる夜空の星を掴めそうにない。
そんな事を話すとバカにされるだろうか?
部活帰り。偶然一緒になったと肩を並べて歩く帰り道そんな事を考えながら歩いていた。
同じクラスの女子と比べて随分と落ち着いて見えるのに、実はそそっかしくて表情がころころ変わるもんだからオレは目が離せなくて、
気が付くとを好きになっていた。
付き合いだしたのは3年になってからで、お互い受験と部活で一緒に過ごす時間なんて限られているのだが、
こうやってたまに時間が合えば一緒に過ごすようにしている。
おは朝信者のエース様の影響で何の気なしに朝はおは朝を見る事が増えた。
お天気コーナーでは今日は十五夜だと言っていた事を思い出した。
微かに触れた指先。その温もりが離れる前にオレはの指にしっかりと指を絡ませ手を繋いだ。
ビクっと肩を震わすとほんのり染まる頬。こう言う初々しさがホントに可愛い。
「ねぇ、清志君。」
「どうした?」
頬を赤らめたままは空を見上げた。
「今、私たちに届いてる輝きが何億光年前のものだとしたら、今は存在しない星の輝きかもしれないって事だよね。」
「そうだな。」
「この時に存在してるからこそ見れるんだと思うとそれってすごい奇跡だよね。」
「だけど、それはそれで今見れない星を見ていたかもしれないけどな。」
するとは少し拗ねたような表情をした。
「清志君と出会ってるか分からないじゃない。」
キラキラと輝く星をの瞳の中に見つけて、オレは手を伸ばしても星が掴めない理由が分かった。
「小さい頃、大きくなって手を伸ばすと星を掴めると思ってた。だけど…掴めない理由が今、分かったわ。」
瞳の中に星灯りを蓄えたままのが首を傾げた。
その頬にそっと触れると柔らかな感触。
「オレが掴みたい星はお前が持ってる。だったら、抱き締めてずっと離さなければいいんだな。」
顔をそっと近づけると瞳の中の星を閉じ込めるようにゆっくりと瞼が下りる。
にそっと口吻ける。
きっとオレたちはアンドロメダとペルセウス。
ギリシャ神話の様に結ばれる運命。