【ハイキュー】その日まで(poco a poco3)
第2章 まどろみ (菅原視点)
暑い……。
セミの声がする。
チリン……
風鈴の音に目を覚ます。
ああ、俺、寝てたのか。
畳の上に寝転んだまま、首だけ動かす。
目の前には、彼女の寝顔。
こいつ、勉強しにきたんじゃなかったっけ。
寝てるんじゃねーよ。
あ、俺もか……。
その顔は汗ばんでいて、
白い頬もこの暑さで少し色づいている。
そっと手を伸ばして、額に張り付いた前髪をなでる。
「んぅ……。」
少し身をよじらせて、起きたかなと思ったら、またすぐに寝息をたてはじめた。
もう一度風鈴の音がして、心地いい風が俺たちをそっとくすぐる。
寝返りを打った彼女の手がこちらに向けられる。
息を止めて、音と気配を殺して、それに指先でほんの少し触れる。
カラン……
机の上のグラスの氷が音を立てて、彼女がゆっくりと瞼を開ける。
その瞳の焦点が合わないうちに。俺は手を引っ込める。
「おはよ。」
俺が目の前でそう言って笑うと、彼女もふわりと笑った。
ああ、俺は、このことを一生忘れないんだろうなと思う。