第10章 かけるばいんど✖️
それが彼女の信条らしい。
更に今日。
彼女の長い髪が仲間の顔をぶったとかで切れと云われ、練習場をボール一つ抱えて飛び出したらしい。
とんだ家出娘を拾ってしまった。
遊びと云いながら、サーブにだけ並々ならぬ執着を見せるその眼は昔の後輩を思い出させて古傷が痛む。
どうしようか考えあぐねていると、――
「澤木はいたかぁー!」
女子部の主将の声が聞こえ足音が近づいてくる。
それがやって来る、という瞬間。
壁際に引っ張られ思い切り首にしがみ付かれ思わず彼女を壁に押し付ける様に腕をついてしまう。
体格差があるから彼女はすっぽり俺に包まれ隠れた。