• テキストサイズ

10月【SS合同企画作品】僕らの景色

第3章 体育大会《リレー》


「いだっ!!」



嘘でしょ。

ゴールまであと5m。あとちょっとじゃん。
なのに、なんで私は地べたとご対面してるの…?



「ー!とりあえずゴールしろ!ビリだけは回避!!」



クラスメイトの声にハッとして、ジンジンする膝をなんとか伸ばしてゴールした。

確か私、あと少しで1位じゃなかったっけ。
案内された旗の数字は「5」の文字。
フリーズしてる間に4人に抜かれたのか。
超ダサい。
速さとしてはそこまで問題無かったのに、私はこうして鈍臭さを発揮することがある。
とても迷惑だ。



「大丈夫かよ」
「青み、ねっ!?」



痛む膝に悲しくなりながら退場すると、同じバスケ部の青峰がいた。
隣にはさつきもいて、とても心配そうにしてくれている。
膝は大丈夫だけど精神的には結構大丈夫じゃない。
そう言おうとしたのも束の間、私は青峰に持ち上げられていた。



「何してんの!恥ずかしいから下ろして!」
「っせーな…保健室まで連れてってやるんだから大人しくしとけ」
「1人で行けるって!」
「ひょこひょこ行ってたら夕方になんぞ」
「それは無いから!」



何を言っても結局下ろしてくれず、さつきに一言言ってから青峰は保健室まで連れて行ってくれた。
ただ、すれ違う人がすごく見てくるので、恥ずかしすぎて私は顔を青峰の体で隠した。
お姫様抱っこというのは昔から憧れていたけれど、こういう状況でされるとさすがに喜んでいられないわけで。



「ったく、あのタイミングで転けるとかほんと鈍臭ぇな」
「うるさいよ…」



保健室に無事に着き、手当をしながら先程の反省だ。
この鈍臭さはどうにかならないものか。



「そんな落ち込むなって」
「…別に落ち込んでない」
「そーかよ」



まぁ正直少しは悔しいし気分も沈んでるけど。



「次のリレー、1位取ってやっから見とけよ」
「…うん…」



そう言って頭をポンポンと軽く撫でる青峰の手は、口の悪さとは打って変わって優しかった。




「おぶんなくていいのか?」
「いいですー!もう歩けますー!」
「転けんなよ〜」



それから2人ともユニフォームに着替え、部活対抗リレーに出場する青峰は所定のところへ行き、私はさつき達と応援場所へ行った。
リレーが始まり、青峰は予言通り1位を取った。




「カッコよすぎ…」
/ 28ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp