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10月【SS合同企画作品】僕らの景色

第12章 夕焼け



ふわふわ。何かが頭を撫でて心地良い。


「…くん」


優しい声が聞こえる。
…僕の名前を呼んでる…?


「…ろこくん、黒子くん」


まだふわふわした頭をゆっくり上げる。
すると目の前には僕の大好きな彼女、さんが覗き込むようにして立っていた。


「…寝てました」
「知ってる。もう5時だよ」
「え…それまで待っててくれてたんですか?」
「うん。気持ち良さそうだったから」


そう笑いながらそっと僕の頭を撫でる。
その手があまりにも優しくて、起きたばかりの頭はまだふわふわしている。
「寝グセついてるよ」とおかしそうに笑う彼女。
僕もつられて笑う。
寝グセはいつものことですよ。


「さあ、帰ろう」
「はい」



秋の空。
見上げると、オレンジに染まっている。
雲は流れるように浮いていて、その景色はとても幻想的で綺麗だ。


「秋の夕焼けって綺麗だよね」
「あ、僕も同じこと思ってました」
「ほんと?ふふ、やっぱり似てるね」


にこにこ。そう笑う彼女は本当に可愛い。

でも、と続けるその表情は、懐かしむような切なげなような、そんな顔をしている。


「こういう景色見ると思い出すよね…」
「…帝光時代ですか?」
「うん…それもだし、誠凛も」
「そうですね。いつも帰る頃は日も沈んでいるはずなのに、なぜか思い出しますよね」


秋の夕焼けは、綺麗で心が穏やかになる。
だけど、それと同時に思い出が沢山蘇ってくる。
不思議と、そういうものだ。


「いろいろあったけど、楽しかったね」
「はい」
「…バスケ、したい?」
「まぁ…そうですね。黄瀬くんや高尾くんとは今でもよく会いますが、他のみんなは…」
「忙しいもんね…」


まさかバスケをしない日がこんなにも続くとは思わなくて、でもその分した時は凄く楽しい。

そういえば、もうすぐウィンターカップの予選が始まる。


「またみんなで試合しようね」
「はい」
「ウィンターカップも観に行こうね」
「はい」


嬉しそうに微笑む彼女。
これまで僕は彼女に何度も支えられてきた。

けど、


「さん」
「ん?」


凄く大事な人だから。
今度は僕が支えると誓って、ピンクの頬に口づけを。


「さあ、帰りましょう」
「~~~~っ、」


冷たかった頬は一気に熱を帯びていったようで、握った手は温かかった。
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