第69章 作品解説
☆『監視官』
ここから、常守朱登場以後になります。本物の『PSYCHO-PASS』のヒロインが登場したわけです。この時点で、縢の運命は、確定しましたね。……私自身も寂しいのですが、本物のヒロインには、やっぱり勝てないのです。
『監視官』最後のポエムは、縢視点。
『この命は いつ終わるかも 分かんねーし
だから ほんの少しでも アンタといたいんだ、って
ガラにもないと アンタは 笑うだろうか』
正確には、この時点の縢の心境ではないです。この話の、もう少し後の、縢の心境を書いたイメージです。
☆『幸福論』
イチャイチャ最後の回。もう、終末の空気が漂っている、全体としてもなかなか不穏な回。
お気づきの方もおられるかもしれませんが、ヒロインから縢に対して、「形として残る物」をプレゼントしたことはあるのですが、縢からヒロインに対して、「形として残る物」をプレゼントしたことは一度もありません。これは偶然ではなく、意図的なものです。縢からヒロインに、「残る物」をプレゼントさせるのは絶対にやめようと、最初から決めていました。だから、普通ならプレゼントしがちな「指輪」や「ネックレス」といった物品も、一度も贈っていない筈です。これは、縢自身がそう決めていたという設定です。縢は、ヒロインを残してこの世を去るということを、分かっています。だから、もしもその時に、「自分から贈られた物」があったら、ヒロインが自分の事を忘れたくても思い出してしまう……、それを恐れての事です。縢は、勿論ヒロインの事は好きだし、愛していてほしいと願っている。でも、もしも自分が先に死んでしまったら、どうか自分のことなど跡形もなく忘れてほしいと願っている……そういう設定の下で、ストーリーを組み立てていました。縢の、ヒロインに対する、ひとつの「愛のカタチ」を表現したつもりでしたが、最高に分かり辛いですね。
ポエムも、
『じりじりと
何かが 焼ける音がする
いや やめて 聞きたくない
白い兎が 視界をかすめた』
という、槙島を意識したものになっています。この場合、アリスは誰なのか……。
☆『体温』
短いです。そうです。そもそも、ふたりが共有している時間が短いからです。
ポエムも短いです。
『雲が千切れて 星を隠した
風もなく 音もなく』
星というのは、勿論、縢の事です。