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シャングリラ  【サイコパスR18】

第7章 『潜在犯』


―――――――「ま、普通はドン引くわな。『人殺し』がベラベラと目の前で喋ってちゃ。まぁ、俺がしといて何だけどさ、こんな胸糞悪ィ話聞かされて、アンタの色相の一つでも濁ったらマズイじゃん?夜も遅いし、早いとこ帰んなよ。」

 俺はそう吐き捨てた後、悠里ちゃんから逃げるようにして、トレーニングルームを出ていった。悠里ちゃんが追ってくる気配はない。当たり前だ。虫も殺せない『善良』で『健康』な『シビュラ市民』が、こんなケダモノの話を聞いた後で、まだそのケダモノを追いかけてくる道理は全く無い。そもそも、『健康な市民』が『潜在犯』と会話をすることに、何のメリットもない。寧ろ、百害あって一利なし、だ。もしも、俺が『潜在犯』じゃなかったら、俺はもっと悠里ちゃんと気の利いた会話ができていたんだろうか。そんなことが頭の中に浮かんだが、そんな考えはすぐに振り払った。俺は『治療更生の見込みゼロ』で筋金入りの『潜在犯』だ。絶対に起こりえない想像をするなんて、虚しいだけだ。こんな日は、さっさとシャワーでも浴びて、適当に食って寝るに限る。

 自室に入り、シャワーを浴びる。今日は2人、犯人を執行した。うち1名は即エリミネーターだった。目標が複数いることは分かっていたが、1人をパラライザーで打った瞬間に、逆上したもう1人がナイフを手に俺に突っ込んできた。パラライザーモードだったドミネーターは新たな対象を捕捉すると、瞬時にエリミネーターへと変形した。そのまま引き金を引き絞って、終了。複数犯だったこともあってか、全員を探すことに手間取ってしまった。シャワーを浴び終わったあたりで、疲労が押し寄せてきた。もう、今日は寝るかな、そう思った瞬間、合成音のチャイムが鳴った。こんな時間に、誰だろうか。コウちゃん?とっつぁん?―――――悠里ちゃん?まさかね。それにしても、今日は誰も来る予定無いんだけど。俺は、濡れた髪をタオルで拭きながら、入り口へと向かった。


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