第13章 『犬』
―――――よくもまぁ、あれだけ身勝手な振る舞いができたものだ。自分の気持ちすらも明かさないままに女の子を押し倒した挙げ句、「帰れ」とか、一体俺は何様なんだ?
悠里ちゃんは悪くない。
俺は、5歳でサイコパス検診に引っかかって、両親にあんな顔をさせて。施設に収容されて、そこからカウンセリングやら投薬やら。まるで、実験動物にでもなった気分だった。俺のイライラは、あの箱の中で、どんどん育てられて、大きくなっていって。『社会』は俺を爪弾きにしたし、俺だって『シビュラ』にも『健康な市民』にも虫唾が走る。
俺の身分―――――『執行官』だって、そのカラクリは酷いモンだ。施設で税金を食い潰させておくだけなら、捨て駒として『潜在犯』を使い捨てたほうが、幾分かは有効活用できるというだけの話。『シビュラ社会』における欠陥品―――――『潜在犯』に、よりどうしようもない産業廃棄物――――『犯罪者』を処理させる。それが、この『執行官』システムだ。『執行官』になる『潜在犯』は、『シビュラの飼い犬』なんて呼ばれる。そう、その通りだ。人間(ヒト)としての魂を『シビュラ』に売り渡して、システムの犬として機能しているのが、『執行官』だ。
――――――悠里ちゃんは、何も知らないんだ。だから、俺なんかを「好き」だなんて言えるんだ。こんなにも、どうしようもなくて、滅茶苦茶な俺を。
――――――あぁ、俺、謝んなきゃ。また、こうやって悠里ちゃんを傷付けて。そのクセできるなら、悠里ちゃんには一緒にいてほしいだとか、許してほしいだとか、俺は都合のいいことばっかり考えてる。浅ましいにも程ってモンがあるだろう。
今更どのツラ下げて、何を言えばいいのかも、分からない。自業自得、だ。