第6章 愛しすぎている~風間千景編~
「有希が…………死んだ?」
天霧から聞かされた話に、俺は不興に眉をひそめる。
天霧は何時も通り淡々と語ってはいたが、それでも珍しくその言葉の端々に無念さを滲ませていた。
俺は取る物も取り敢えず西国を出て京に向かった。
天霧の話を疑った訳では無いが、自分の目で確かめなければどうにも納得出来ない。
天霧も敢えて俺を止めようとはしなかった。
京までの道程で思い浮かぶのは、別れる時に見た有希の泣き顔ばかりだ。
俺に肩を抱かれて……俺を見上げる有希の瞳は涙に濡れていた。
泣きながら俺以外の男を愛していると有希に告げられた時の胸の痛みが全く癒される事無く今だ心の深層に残っている。
あの泣き顔が最後か?
あれ程愛した女の笑顔すら思い出せないまま終わりなのか?
俺の足は自然に逸った。