第3章 -ワイン②-
「すみれちゃーーん‼︎」
「高尾くん⁈お…おはよう。」
朝からテンション高いなぁ…。
「おはよっ!すみれちゃん!今日なんの日か知ってる⁈」
「今日…?」
なんだっけ?誰かの誕生日?
「ボジョレー解禁日だって‼︎知らないのー?」
「あ…そういえば。」
「高尾!オレたちはまだワインは飲めない年齢なのだよ。そんなこともわからないアホだったのか?」
辛辣とはいえ、緑間くんに1票…。
「真ちゃん、ひでーーっ‼︎」
でも、慣れっ子なのか、高尾くんはめげない。
「そんくらいわかってるっつーの!でも、いーもんあるから!すみれちゃん、今日、部活終わったら待っててよ‼︎一緒に帰ろうぜ!」
結局よくわからないまま、部活後、高尾くんと合流し、一緒に帰った。
「ちょっと寄り道な♪」
「え?」
高尾くんは突然、わたしの手を引き、公園に入った。
真っ暗な中、街灯の明かりを頼りに木のテーブルと椅子のあるトコまで行き、なぜか並んで座る。
「高尾くん?何するの?」
「いーからいーから♪」
高尾くんはバッグから可愛らしいランチョンマットとプラスチックのグラスを2つ取り出した。
「え⁈コレ⁈」
「すげぇだろ⁇100均で見つけたんだー♪」
あ、えっと、そっちじゃなくて…
「で♪…じゃーん!」
「えっ⁈」
高尾くんが最後にバッグから取り出したのは、ワインだった。
「ボジョレーっ‼︎」
「の、飲めないでしょ‼︎ダメじゃん‼︎」
「ぎゃははっ‼︎やっぱすみれちゃんも引っかかったー?コレ、ジュースなの!すごくね⁈」
わたしの反応に大爆笑している高尾くんがボトルを見せてくれた。ワインのようなボトルだが、よく見ると”果汁100%”と書いてあるブドウジュースだった。
「ボジョレー風…な♪」
高尾くんはそう言ってプラスチックのグラスにボジョレー風のブドウジュースを注いでくれた。
「ふふ…大人になった気分だね。」
「なぁ…すみれちゃん?」
「なぁに?」
「ハタチになった時も…オレと解禁日過ごしてくれねー?」
「えっ?」
「大人になっても…ずっとすみれちゃんと一緒にいたい。」
プラスチックのグラス越しに見える高尾くんの瞳は…じっとわたしを捉えてはなさなかった。
---End---