第2章 -ワイン①-
今日はボジョレーヌーボー解禁日。
わたしの彼…征十郎はぬかりなくボジョレーヌーボーを用意していた。
それも限定生産であろう見るからに高級そうなモノを。
「すみれは少しはお酒は強くなってるかな?」
「え?」
「去年はあんなに酔っ払うとは思わなかったからな。」
征十郎が苦笑いしながら言う。
20歳になって初めて一緒にボジョレーヌーボーを飲んだのは、素敵なレストランだった。
美味しい食事に美味しいワイン…思いのほかワインが進んだわたしは、顔を真っ赤にして笑ったり他のお客さんに絡んだり…していたらしい。
「あ…あの時よりは大丈夫だよ‼︎」
去年のことがあったからか、今年の解禁日は、征十郎の部屋で2人きりで飲むことになった。
「まぁ、今日はオレしかいないんだし…存分に酔っぱらって甘えてくれてもオレは構わないよ。」
「えっ⁈」
征十郎はさらりととんでもないことを言い放ち、2人のグラスにワインを注いだ。
「…⁈そんなに飲めないよ。」
「大丈夫。2人きりだろ?」
「もう…」
「拗ねた顔もすみれは可愛いな。」
「な…っ⁈も…もうっ‼︎乾杯しよ!」
征十郎にはかなわない。
わたしは慌ててグラスを持った。
「はは…そうだな。じゃあ…乾杯。」
「乾杯。」
征十郎と同時に一口飲む。
「美味しい!」
「あぁ。飲みやすいな。」
征十郎のことば通り、飲みやすかったワイン…わたしは思いのほかすぐにグラスを空けてしまった。
「ふふ…もう赤くなっているよ?大丈夫かい?」
自分でもポーッとしているのがわかった。
征十郎は顔色一つ変えず、わたしを見つめている。
「ぁ…大丈夫…だよぅ。もう1杯飲みたいな。」
「…今日はダメだな。」
「えー⁈なんでよぅ!」
「すみれはこれで最後にしたほうがいいな。」
…チュ。
「…っ⁈」
征十郎はわたしにそっとキスをした。
征十郎の唇からほのかにワインの香りがする。
「唇からでも風味がよくわかるだろ?
すみれがもう少しお酒に強くなったら…
もっといろんな飲み方を楽しもうか。
(すみれには口移しはまだ早い…か)」
「え…⁈う…ん?」
ワインのせい?
それとも征十郎の意味深な微笑みのせい?
わたしは征十郎から目をはなせなくなっていた。
---End---