第8章 -ハロウィン-
「ツッキー‼︎‼︎」
部活帰り、山口と別れ、やっと1人になったので、ヘッドフォンを付けようとしたら、またあの呼び方でボクを呼ぶ声がした。
この呼び方をする女子は、すみれだけ。
「その呼び方やめてって言ってるデショ?」
「山口くんだって呼んでるじゃん!」
ボクの意見は受け入れられず、すみれは構わず話を続けた。
「今日ね‼︎すごいうまくサーブができたの‼︎それで、その感覚を忘れないように、ついいつもより練習しちゃった‼︎」
「ふーん。」
「練習頑張ったら、帰りにツッキーにも会えたし、こういうの一石二鳥って言うのかな♪」
…っ⁈
そういうコト言うの…恥ずかしくないの?理解不能。
でも、そう思っている自分とは裏腹に、すみれとの会話を楽しむもう1人の自分がいる。
「そういえば、今日…」
…ドンッ‼︎
「きゃっ‼︎」
曲がり角のトコロで、すみれが出会い頭に誰かとぶつかった。
「…?すみま…きゃあっ‼︎」
謝ろうとしたすみれは、相手の姿を認識すると、今度はその姿に驚き、ボクの腕をギュッと掴んだ。
「「お菓子をくれなきゃイタズラするぞー‼︎」」
小学生くらいの子が2人、オバケの格好をしていた。
「あ…そっか…ハロウィン…」
ぶつかった相手の正体に気付いたすみれは、スッとボクの腕から離れ、ホッとしたように胸を撫で下ろしていた。
「イタズラされたら困るからなぁ。じゃあ…これ…はい‼︎」
さっきまでの怯えた姿はどこへやら…
すみれはバッグからハロウィン柄の包みのキャンディを取り出し、2人に渡した。
「「ありがとー‼︎」」
小さなオバケたちはあっという間にいなくなった。
「ふふ…可愛かったね。」
「驚いてたクセに…。」
「だってー。」
だってーとスネるすみれは子どものようで可愛らしい。
「お菓子持っててよかったー。今日皆でハロウィンのお菓子交換したの♪イタズラされなくて助かったね♪」
すみれは笑いながら言った。
「ねぇ、ボクにはないの?」
「お菓子⁇…ゴメン!さっきので最後だ…明日…」
「じゃ、イタズラしていい?」
「え…?」
…チュ。
お菓子をくれないすみれが悪いんだよ?
---End---