第7章 -カーディガン-
そろそろバレー部の自主練も終わる頃だろうと思って図書室を出て、校門の前に来たけど、早すぎた。
遠くにまだ明かりのついている体育館が見えていた。
孝支はまだ頑張ってるのかな。
わたしは夏で吹奏楽部を引退した。わたしは家では集中しないので、勉強時間の確保も兼ねて、毎日図書室で勉強しながら孝支を待つのが日課になっていた。
勉強は半分口実…本当は少しでも孝支と一緒にいたい。その気持ちのほうが強かった。
それにしても…夏が過ぎて、さすがに夜は冷えてきたなぁ。夏服から冬服に変わったけど、わたしはまだブレザーを着ておらず、上はカーディガンだけだった。
明日からブレザー着ようかな…。
「悪いっ!遅くなった‼︎」
そんなことを考えていると、孝支が手を振りながら走ってきた。
「大丈夫だって!そんな走らなくていいの…クシュンッ。」
「ほら!寒かっただろ?…ったく。オレがメールしてから図書室出ればいいだろー?風邪ひくべ?」
「くしゃみしただけだよー?」
歩きながら、孝支に少しだけ抗議する。
「すみれは油断しすぎ‼︎てゆぅか、ブレザーは?なんで着てないの?」
「今日は暑かったから着てこなかったの。でも、夜は冷えるね。明日から着てこよっかなぁ。」
「今日の夜は冷えるって天気予報で言ってたじゃん‼︎ちゃんと見てきなさい!」
「もぉ!孝支はわたしのお母さんですかー?それに、孝支だって、学ラン着てないじゃん!」
孝支だって上はカーディガンだけだった。去年お揃いで買ったキャメル色のカーディガン。
「オレはいーの‼︎部活してきたから暑いし!」
なぜか偉そうに言う孝支に思わず吹き出してしまった。
「なんで笑うんだよー⁈それにさ…。」
「なぁに?」
孝支は急に立ち止まり、わたしの手を握った。
「ど…どしたの⁇」
「こうやって、手繋げるなぁ…ってちょっと思ってさ。」
…っ⁈
そう言うと孝支は、握ったわたしの手にギュッと指を絡ませ、そのまま自分のカーディガンの中にわたしの手まで入れてしまった。
「な⁈あったかいだろ。」
ニコッと孝支に微笑まれると、手だけじゃなくて、気持ちまであったかくなった。
明日も…ブレザー着るのやめたくなっちゃうよ。
---End---