第6章 -秋刀魚-
爽やかな秋晴れの日曜日…
ちょっとだけスネた気持ちで、クロの家に向かう。
午前中で部活が終わり、クロの家でゴハンをご馳走になるコトになっていたのに、学校を出るときに、「お前、着替えてから来いよ!」と言われたからだ。
クロと遊ぶ時はだいたい部活後にそのままジャージで遊んでるのに。
服…迷うじゃん…。
散々迷ったあげく、ネルシャツ風のシャツワンピ…にした。足元はスニーカー。気合い入れてないようで…可愛くなりすぎないようで…でも、ウエストのトコが細い紐でキュッとリボン結びをするので少しだけ可愛さを残しつつ…
って、メチャクチャ意識し過ぎちゃうよ…!
クロの家が近づくといい香りがしてきた。お庭のほうから声が聞こえたので、お庭を覗いてみる。
「おじゃましまぁ…す」
「…⁈おう。来たか。いいタイミングで来るなぁ。」
クロは七輪の火を一生懸命うちわであおいでいた。
「あ!秋刀魚‼︎クロ、すごい!自分でしたの?」
「ん?まぁ、準備はじいちゃんだな。」
「おじいちゃん、食べないの?」
「あー。ばあちゃんとデートだと。」
七輪の火を消したクロが言う。
「相変わらずラブラブだね。」
「もうジジババのくせになー。」
「ひどーい‼︎理想だと思うけどなぁ。」
「へーへー。ほら、皿持て。」
「はーい。」
クロが秋刀魚をお皿に載せてくれ、2人で縁側に座った。
「クロにはいい季節だね♪」
「だなー。」
クロがカボスをかけてくれた。
「ありがと。いただきまぁす。」
「おっ!やっぱうめーーっ‼︎」
「うん!美味しいねー。」
七輪で焼いた秋刀魚の塩焼きは、他で食べるより格段に美味しかった。
「ねぇ、七輪で秋刀魚焼くなら、わたし、着替えないほうがよかったんじゃない?焼くのも手伝えたし。」
「あー?いーんだよ。」
「なんでよ?」
「すみれの私服、見たかったから?」
「な…っ⁈」
クロがジッとわたしを見ていた。
「部活ばっかだったし、久々じゃん?」
「そ…そうだけど…」
「うまい秋刀魚と可愛いすみれちゃん…オレ得の日だな♪」
そう言ったクロは、わたしの膝にゴロンと横になった。
「ちょっ⁈クロ…⁈」
もう‼︎
これじゃ、まるで猫だ…。
でも…
そんなクロ猫が…わたしは好き。
---End---