第5章 -文化祭②-
控え室になっている教室で休んでると、文化祭実行委員のすみれが来た。
「お疲れさま。チャンピオンおめでとう♪さすがだね。」
「おう!」
なんのチャンピオンかって…文化祭の腕相撲大会のチャンピオンだ。京谷も頑張ってたけど、まだまだだな。
「ねぇねぇ、わたしもやりたい‼︎」
「は⁈」
「チャンピオンがどれくらい強いのか、体感してみたいなーって。もちろんハンデありでね!わたしは両手ー♪」
…っ‼︎
「わかったよ。」
イタズラっこのように、すみれにニッコリ微笑まれると、オレは断れなかった。
すみれはオレの前に座って、腕まくりをした。
「すみれが両手でも負ける気しねーんだけど。」
腕まくりされたすみれの細くて白い腕をつい盗み見てしまう。
「あはは。それでもいいのー!」
すみれはオレの手を両手でギュッと握った。
…っ⁉︎
これから腕相撲をするから手を握るのは当たり前なのに、すみれの小さい手に握られ、オレは自分が思わず赤面してしまうのがわかった。
「…岩泉くん?」
すみれがオレの顔を覗き込み、さらに追い打ちをかけてきた。
「なんでもねー!始めるぞ!」
「うん!よーい…スタート‼︎」
すみれは掛け声とともに手に力を入れるが、やっぱり大したコトはない。
「うぅ…‼︎ぜんぜん動かなーい‼︎」
「当たり前だろーが!」
オレは力を緩め、ギリギリまでオレ側に倒れてやる。
「あっ‼︎」
でも、そこで、一気に力を入れ、すみれ側に一気に倒した。
「あー。負けちゃった。やっぱり強いなぁ。」
ふにゃりと笑いながら、すみれは握っていた手をはなした。
「もう少し強くならなきゃなぁ。」
「…なんでだよ?」
「そしたら、もう少し長く、岩泉くんの手…握っていられるでしょ?」
…っ⁈
すみれのことばにオレは思わずすみれを見つめてしまった。
すみれもオレをジッと見つめていた。
「オマエは強くなるな。」
「えっ⁈」
「手くらい…いつでも握ってやるよ。」
オレはすみれの手をギュッと握った。
---End---