【ハイキュー‼︎】【オムニバス】 岩泉一の恋愛事情
第5章 愛される……
ストーブと灯篭の放つ光の中、後ろから抱きしめられたまま、しばらく2人で庭を見ていると、
付き合ってることは秘密にしておきたい。
そう言われた。
「知られたくないヤツがいんだよ」
「……だれか女の子、とか……?」
「バカ、そんなんじゃねぇよ……」
言葉尻を濁したまま、黙ってしまう。
「あ、あの別に気にして、」
「及川だよ」
「え」
「及川、覚えてないか?」
もやんとした記憶をたどる。
「もしかして、あのいじめっ子……?」
「そう、あいつ」
はじめくんがぷっと笑う。
はじめくんが小学校に上がった頃、よくはじめくんの家に遊びに来てた子がいた。
その子によく苛められた。
いじめって言っても、大したことじゃない。
はじめくんのお母さんにもらったおやつをかすめ取られたり。
ボールを投げつけられたり。
虫を手のひらに乗っけられたり。
「結局小学校からずっと一緒なんだよ、俺ら」
「あ、もしかしてバレー部?」
バレー部主将の及川さん。
校内一番の人気者で、学祭の人気投票でも必ず一位になる。
仲良くなった女の子たちがこぞって教えてくれた。
「あの子だったんだ……」
「あいつ、あの頃、絶対お前のこと気にいってた」
「そんなことないよ……それに今は関係ないし」
「気になる子ほどからかいたくなる。男の本能だ。それに、おまえ、あいつの好みのタイプだから」
首筋に唇の感触……
「だから及川には知られたくない……付き合ってることが誰かにバレれば、絶対及川にもバレる……だから、隠しておきたかった、おまえのこと」
「そんな昔のこと……」
「わかってる。なにテンパってんだって、自分でも思う」
後ろからぎゅっと抱きしめられたまま、首や肩にちゅっ、ちゅっ、とキスが降ってくる。
「でも、やっぱり嫌だ……おまえのこと誰にもとられたくない」
「おおげさ……」
「おおげさなんかじゃねぇよ」
ムスッとした口調。
「あいつは……及川は、欲しいものは絶対あきらめない」
振り向くと、眉根を寄せた顔のまま唇を重ねてくる。
舌先で唇をこじ開けられると、すぐに舌が絡まってくる。
啜るように舌を吸い上げて唾液を飲まれる激しいキスにくらくらする……
「渡さねぇよ……」
はじめくん、おおげさ。
そう軽く考えてたのに……