第11章 閑話休題:鶴丸国永
たとえばそれは、笑った顔であったり、優しい声であったり、慈しみに満ちている瞳であったり。
あるいは、表情が豊かなことであったり、刀の扱いに優れていることであったり。
また、すべてのものに真摯であろうとする姿勢は、非常に好ましい。
けれど、それだけじゃない。
己を見つめる瞳が。
好きなのだと雄弁に語るその表情が。
ここにいるだれよりも泣き虫なのに、泣くまいと唇を噛み締め上を向く姿が。
あるじの、不器用な愛が。
その、すべてが。
好きなのだと、守らなくてはと。
鶴丸国永という刀が惚れたのは、そんなどうしようもな位くらい人間くさい、たったひとりの人だった。