第10章 何よりも自分の命を大切にしろ 〜忘れることのない約束〜
「世話になったわね、銀。ありがとう」
昏葉は身支度を整え、傘帽子を被って万事屋の玄関に立っていた。
「あァ、気にするな」
銀時は小指で耳の穴をほじりながら、もう片方の手をひらひらさせた。
「もう少しゆっくりしてけばいいのに……僕たちはいつでも大歓迎ですよ」
「僕たちって誰のことアルカ」
デレデレしている新八を神楽が冷めた目で見ている。
「新八君、ありがとう。また何かあったら、寄らせてもらうから大丈夫よ」
気を使ってくれる自分よりも年下の男の子ににこりと微笑んで、女は銀髪の男に向き直った。
「じゃあ、銀時。わたしはまだこの町に残るけど……昨日話したことは覚えてるかしら?」
「あ? あー、まあな」
男は片目を瞑って、めんどくさそうな顔をした。
「……何かあったら……よろしくね」
「あァ、任せとけ。お前も気を付けろよ」
先程の雰囲気とは打って変わって、張り詰めた空気が周りに流れている。
「大丈夫よ」
クスッと笑って、女は玄関の扉に手をかけた。
「またね。お世話になりました」
「あー、昏葉」
外に出て行こうとする昏葉を銀時は呼び止めた。
「何?」
閉めようとしていた扉を止めて、昏葉は目の前の男を見上げた。