第1章 【至福の瞬間】丸井ブン太
3時間目が終わると、私は慌てて髪を整える。
震える手を胸に当てて、大きく深呼吸して、落ち着け、落ち着け・・・そう自分に言い聞かせる。
「よぉ!今日のおやつはなんだ?」
そう言って後ろから近づいてくる彼に、バッグからクッキーを取り出すと、私はいつもぶっきらぼうに答える。
「全く・・・いい加減にしてよね、毎日毎日!」
私の髪をいつものようにクシャっとにぎりしめ、サンキュ、と満足そうに笑う彼。
私は乱れた前髪を整えながら、赤く染まった頬を手鏡で隠す。
「もう、やめてよね。髪、乱れちゃったじゃない!」
「んなの、全然変わんねーだろぃ?」
「ちょっと!それどういう意味よ?」
角度を変えた鏡にうつる彼は、毎日幸せそうにお菓子を頬張っていて
そんな彼をこっそり見つめる時間は
私の至福の瞬間____
【至福の瞬間】丸井ブン太