第29章 【夏服】菊丸英二
「いるかな・・・」
そっと教室の入口から中を覗き見る。
いつも通りの朝、だけど、ぜんぜん違う朝・・・
「おっはよーん!・・・あっ!」
後ろから聞こえた声に、ドキンと心臓が跳ねる。
追い抜かれ際、肩がぶつかり衝撃でカバンを落とす。
「あっちゃー、ゴメン、大丈夫だった?」
ブンブンと首を横に振り、拾ってくれたカバンを受け取る。
チラリとその顔を見上げると、目が合って恥ずかしくて慌てて俯いた。
「んー・・・?、小宮山、今日、なんか雰囲気違うー?」
そっと顔を上げると、目をパチクリさせながら、なんでだろ?、そう小首を傾げて私を見る彼・・・
そんなに見つめられると、本当にどうしたらいいか分からなくなってしまう・・・
「あ、あの・・・夏服、だから・・・?」
やっと絞り出した声は上擦っていて、手はじんわりと汗ばんでいて、心臓はドキドキして爆発しそうで・・・
「あ、そっか、どーりで!」
今日から夏服・・・
ニッと笑うあなたの笑顔も、ワイシャツの白にとてもよく映えて・・・
いつもよりずっと眩しく輝いて見える
6月のはじめの日___
【夏服】菊丸英二