過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第15章 契約の穴
――――翌日、
ナナバとハンジに伴われ、ナナシは地下牢に現れた。
いつもの無表情ではなく、額に青筋を立てた怒りの形相で
牢屋にいる男共を一瞥した後、ナナシはまずリヴァイの牢の鍵を開ける。
「何か・・・すまぬなリヴァイ。お主まで牢屋に入れられてしまって・・・・」
「おまえは悪くねぇから気にすんな。悪いのはそこにいる
発情した筋肉ゴリラ共だ」
牢屋から出たリヴァイは巨人の項を削ぎそうな目付きで、
エルヴィンとミケを睨んだ。
とばっちりで牢屋にぶち込まれた身としては、
恨み言の一つでも言いたくなるが、
エルヴィンには何を言っても無駄だとわかっているので
舌打ちする。
「ナナシ、ミケに握られたどんぐりは大丈夫かっ!?」
ガシャンと鉄格子に貼り付きながら言ったエルヴィンに
冷たい眼差しを向けたナナシは、彼を無視してミケの牢を開け
「出ろ」と親指を立てて促した。
昨日酷い事をしてしまったミケは最初渋ったが、
「再起不能になるくらい蹴られたいか?」という言葉に、
すごすごと牢から出る。
エルヴィン以外を牢から出したナナシは人払いをした。
ハンジ達はナナシをエルヴィンと二人きりにする事を
心配していたようだったが、ナナシとしてはあまり他人に
聞かせたくない話なので皆には退室してもらったのだが・・・・
いざ二人きりになると何から話して良いかわからなかった。
何か話さねば・・・と考えれば考えるほど、
ナナシの頭はテンパってしまう。
困惑しているナナシに気遣ってかエルヴィンが
心配そうな声で「ナナシ大丈夫か?」と声を掛けてくれた。
見れば真剣な顔でナナシを心配してくれているエルヴィンが
鉄格子の向こうに立っている。