過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 後編】
第10章 眷属達の想い
「・・・何故、そこまで私達にナナシを会わせようとしてくれるんだ?」
エルヴィンがそう尋ねると、三人は眉尻を下げて困ったように笑った。
「・・・これが、あいつの為だと信じているからだ。
あいつは迷っている。会いたくないと言いつつ、
てめぇらの事ばかり案じてやがる。それが俺達には歯痒い」
「それなら、いっそ会わせた方が良いと思ったんです。
ナナシちゃんは頑固な所があるから自分から殻を破ろうとしない。
それじゃあ、ナナシちゃんの為にならないんじゃないかなって思って・・・」
「忠誠心にはいくつもの形があると思うのです、スミス様。
時に主を諌め、主に進言し、主の間違いを正す・・・」
ジェリー、イサザ、ジャックは笑みを消し、
主に忠誠を誓う時のような表情でエルヴィン達を静かに見据えた。
「それが我ら眷属が示せる唯一の忠誠です」
「それが我ら眷属が示せる唯一の忠誠だ」
「それが我ら眷属が示せる唯一の忠誠でございます」
濁りのない瞳と淀みなく告げられた言葉から彼らの本気が伝わり、
エルヴィン達は言葉を失い圧倒された。
想い、気迫、覚悟・・・どれをとっても彼らの忠誠心は本物だと言えた。
今人類の中でこれ程濁り無く誰かに忠誠を誓える者がいるだろうか。
人類に心臓を捧げているとはいえ、
エルヴィンは王に誓いを立てている訳ではない。
ナナシも欲しいが、純粋にここまでの忠誠を捧げる
この三人も欲しいとエルヴィンは思った。
こういう人種は、主には絶対服従する。
それが例え「死ね」という理不尽な命令であっても、
彼らはそれを迷わず遂行するだろう。
だが、彼らはナナシには従うが、他の誰にも従わない。
それはエルヴィンが欲する駒となり得ないということでもある。
ナナシを介して命令しても、それがナナシの本意でないと知れば
絶対従わないだろう。
非常に残念だと思いながら、
エルヴィンは三人を調査兵団に勧誘する事を諦め、
敬意を示し敬礼する。