第1章 プロローグ
見渡す限りの荒野に、真っ赤な装甲に覆われたアバターは立っていた。
真っ赤な装甲は、メタリックな感じを出しながら、炎のように常に色が揺らめき変わっていた。
M型にしてはかなり小柄なその頭の上には魔法使いを彷彿とさせるとんがり帽子が乗っかっており、マントが風になびき常に形を変える。
そしてその手にはアバターの身長をゆうに超えるほどの長さの槍が握られていた。
数秒後、その荒野に...正確には【世紀末ステージ】という。もう一つのひょろっとした人影が姿を現した。それは少年が乱入した主である【シルバー・クロウ】だった。彼は加速世界唯一の完全飛行型として加速世界でも有名人だ。
「見つけたっ!タク!挟み込もう!」
そう【シルバー・クロウ】叫んだ瞬間、その人影の後ろから大きな影が跳躍し真っ赤なアバターの後方に着地する。
「僕たちにソロで挑んだんだ!勝たしてもらうよ【バーニング・ウォーデン】!」
反対に着地した大きな影、アバターネームはどうやら【シアン・パイル】というらしい、まあ意図的に挑戦したのだから既知のうちだが。
そう言われて真っ赤なアバターははじめて口を開いた。
「違う違う、勝つのは俺だ。【グングニル】!!」
必殺技名のいきなりの発動、まだ必殺技ゲージは10分の1もない中だった前半だったので相手のアバターである【シアン・パイル】と【シルバー・クロウ】は大きく動揺した。
しかし身構えた時にはもう遅かった。
【バーニング・ウォーデン】の手に握られていたはずの槍がいつの間にか貫通して【シアン・パイル】の身体に刺さっていたのだ。
そして槍はそのまま回転して、唐竹に【シアン・パイル】の上半身を切り裂くと、【バーニング・ウォーデン】の手に戻っていった。
【シアン・パイル】は「そんな...ッ!?」という言葉とともにHPバーがゼロとなりエフェクトをまき散らして消えた。
そして固まっていた【シルバー・クロウ】が再起動して言った。
「き、君はレベル3...だよね?」
【バーニング・ウォーデン】はなんともない口調で。
「そうですよ。俺はレベル3ですが?クロウさん?」
【シルバー・クロウ】はその強さ以上に、確かに見た。その槍にまとわる心意のオーバーレイ《過剰光》を。