第1章 風邪編〜影山飛雄〜
静かな部屋に響いたリップ音は、
確かに間違いなく、私の頬で鳴っていた。
…って、えええ!?
「お、お前、か、可愛すぎんだよボケェ!!
いいいいいい加減に気づけボケェ!!
俺はお前が好きなんだよボケェ!!」
混乱した頭で彼を眺めていると、
彼自身も一気にまくし立てた言葉に驚いているようで、
自分の言った言葉の意味に気づいて、
だんだんと顔が赤くなっていく。
「っ!!い、今のは忘れろ!!」
「忘れられるわけないよ!!」
「いいから忘れ…「好きなの!!」
気がついたら、彼の言葉を遮って叫んでいた。
でも、もう、隠す必要ないんだよね?
「私も…好きなの…影山くんのこと…」
言ったあとでとてつもなく恥ずかしくなって、
とっさに、手元にあった毛布で顔を隠す。
「じゃ、じゃあ、その…お、俺と付き合え!」
彼らしい告白に、思わず笑みが溢れる。
「ふふっ、命令系?」
「うっ…」
「こちらこそ、よろしくおねがいします!」
毛布越しにそう言うと、急に毛布をはぎ取られ、真っ赤な顔が露になる。
「ん…」
重なったのは、唇だけじゃなくて、二つの恋心も…