第4章 九尾襲来の日。それから。
両親を待っているわたしのところに、一人の男性がひどく憔悴した様子でやってきた。
男性は、この村に五人しかいない忍びのうちの一人で、ナキさんという。
ちなみに、わたしが意識を転生したとき、父を呼びに来た人でもある。
「ナキさん、どうしたんですか?」
「・・・・ミユキちゃん。落ち着いて聞いてね」
重く、静かに話しかけてきたナキさんに、不安が募る。
「更科さんが、ミユキちゃんの両親が・・・・亡くなった」
え・・・・?
なく、なった?
死んじゃったってこと・・・?
「もう、二人は帰ってこないんですか?」
「・‥っ、うん。そう、もう帰ってこないんだ」
「そう、ですか」
そうか。わたしの両親はもう帰ってこないのか。
声を聞くことも、抱きしめてもらうこともできないのか。
そ、か。
ああ。どうしよう。
ほんとにどうしよう。
泣けない。
2年間一緒にいた両親が死んだ。
なのに泣けない。
わたしはなんて薄情な人間なんだろう。
前の世界にいたときからそうだった。
同じチームの仲間がやられても何とも思わなかったし、誰かが一方的に集団で殴られているのをみてもなにも感じなかった。
わたしはやる側だったし。
すこしはましになったと思っていたんだけどな。
人間の本質はそう簡単には変わらないってことかな。
「ミユキちゃん・・・」
ナキさんの心配そうな声が降ってくる。
なにも話さなかったせいか、心配させてしまったみたいだ。
「大丈夫ですよ」
と、笑ってみせれば複雑そうな顔でうなずかれた。
理解してないとおもわれてるのかな?
理解してますよー、ってな。