第1章 私達は生きる。
神も仏も居やしないけど、クマ型ロボットは居た。
校舎だけの閉鎖的空間。
外の景色が恋しいな。
青い空を見上げたいな。
草の匂いのする風に当たりたいな。
此処には居ない、君に会いたいな。
分厚い鉄板で覆われて、もはや窓は壁になる。
玄関口にはSFじみた機械構造の大きな扉に機関銃。
私を含め生徒は僅か16人。
クマ型ロボットは学園長。
此処から出たいなら、誰かを殺せばいいらしい。
拉致だ、監禁だ、殺人強要だ、とみんなはどよめく。
私はどうしたらいいのか分からなかった。
殺すか、殺されるか、誰も欠けずに一生を此処で過ごすか。
これはゲームだった。
フィクションの世界なんかでよくある、陳腐な設定だらけのゲームだった。
第三者が楽しむためのエンターテイメント的ゲームだった。
私達にとってはどうしようもなく、残酷で悪趣味なゲームだった。
私はきっと、生き残れないだろうな。
与えられた部屋の片隅でそう思った。
一人一部屋の生活空間。
テーブルにベッド、勉強机、シャワーとトイレ。
その上、鍵付き完全防音。
食料は部屋を出てすぐの食堂にある。
生きていくだけなら十分に事足りる備えだけど、問題はそこじゃない。
いくら快適に生活できても、此処から出たい人は幾らでもいるだろう。
現に私だって外に出たい。ただ今のところ、その思いが人を殺す覚悟に結び付かないだけで。
そこまでして外に出るつもりは無いと感じている。
でも、それは入校3日目で起こってしまった。