第3章 SSリレー
私の彼氏は手を繋いでくれない。付き合ってもう1年になるのに未だに繋いだことはない。友達に手も繋げないほど純情ボーイなのかって聞かれる。いいや、私を見かければいつだって抱きついてくるし、ハイタッチだって点を決める度にしている。なのにどうして手が繋げないのか。
キッカケは至って馬鹿げてる。後輩の赤葦と音駒のキャプテン、クロに手汗がひどいと馬鹿にされたからだ。
私からすればそんなこと?と思うが彼にとっては地球が滅亡するくらい大変な事なんだと言われた。
そんな彼だから現在(デートの最中)だって手を繋いでくれない。私は別に手汗なんか気にしてないのに。ただ手を繋いで一緒に歩きたいだけなのに。
《 あんたら大丈夫ですか?もう付き合って1年ですよね?》
この前赤葦に言われた言葉が頭をよぎる。私だって一生懸命背の高い彼が少しでも繋ぎやすい高さになるように無理して高いヒール履いたり努力してるのに…。
そんな努力も無駄で彼は手を繋ぐ素振りさえ見せてくれない。
段々痛くなって行く足と重くなっていく心。
『ごめん木兎。ちょっと足痛くなっちゃったから休憩してもいい?』
「そーんな高いヒール無理して履くからっしょ?俺の靴と交換する?」
『やだよ。木兎の靴大きすぎるし、私の靴木兎が履いたら壊れちゃう』
「…じゃあ俺がおんぶしてやるよ!」
『それもやだ』
「じゃあどうすればいいんだよー!!」
『…つな…でよ…』
「ん?」
『手繋いでよ』
我慢してた思いが涙と一緒に溢れ出して行く。
『もうやだ。木兎意味わかんない。私と付き合って1年も経つのに手も繋いでくれない。それなのに私が他の男の人と手が触れるだけでふてくされる。私の方がどうしたらいいかわかんないよ!!』
ポロポロ泣き出す私と焦る木兎。
「ああもう!」
そう言って頭を掻き木兎は私の手を掴み路地裏に向かって歩き出した。止まった瞬間に私は木兎の腕の中にいた。
『ちょっ…』
「俺だって繋ぎてえよ!でも初めての彼女に嫌な思いさせたくないって考えてて。そしたらにもっと嫌な思いさせてて…。ごめん」
なんだか真剣に謝ってる木兎が珍しくて思わず笑ってしまった。
「笑うな!」
『ごめんププッ』
「…で、どうですか?俺と手を繋いだ感想は」
『幸せ…です』
私の彼氏は不器用だ。でもそんな彼のことが私は世界で1番好き。