第23章 狂った果実～ルイ編～

「1億」




『……………はい？』




「1億ベル」




会場がざわめく。




少年は、声がした方を

そっと見上げた。




紫紺の髪の上品な男性が

手を挙げていた。




マスクをしていて顔は分からなかったが、

その流麗な所作から

かなりの階級の貴族だと予感させられる。




『1億でございますか？』




「そう申し上げたはずですが。

何か問題でも？」




『……いえ。

では本日の目玉「禁じられた少年」は

そちらの紳士に』




会場に拍手が沸き起こり

ルイは、温かい毛布に包まれると

紫紺の髪の紳士に手を引かれた。




紳士がルイに

そっと耳打ちする。




「行きましょうか。

ハワード卿の御子息」




「えっ？」

（俺を知ってる……？）




ルイは、欲情に身体を震わせながら

紳士に促されるまま

馬車に乗って会場を後にした。








直後、バンっ！

とオークション会場の扉が開かれ、

一人の男が入ってくる。




「っ！

遅かったか……！」




男は客席の手すりをぎゅっと掴み

辛そうにその場にしゃがみ込んだ。




「ルイ………っ」




客がぞろぞろと帰る中、

男は、暫く

その場から立ち上がれなかった。


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