第16章 幼馴染み【菅原孝支】
「あっさひー!!会いたかったよぉー!!」
そう言って春乃は、びょーんと飛び、旭に抱きついた。
「うっ!!春乃、急に飛びついてこないでよ」
「そんな事言ってもちゃんと受け止めてくれるじゃんか!」
「でも…」
「いーの!」
「…はい」
春乃のテンションに飲まれている旭に少し同情し、それと同時に嫉妬もする。
「ほら旭おんぶー!」
「え、ええ!?」
春乃が口を少し尖らせてねだる。その様子を大地達が笑いながら眺める。俺は複雑。だってさ。俺は春乃の幼馴染みなのにあーして甘えてくれないし。ちぇっ。幼馴染みじゃなかったらこうして甘えてくれるんだろうか。
「ほら旭ー」
「う、うん。わかったから。ほら」
旭がしゃがんでおんぶする大勢にはいる。そんな旭を見て満足したのか、春乃が我が物顔で旭の背中に乗った。
「やっほーい!旭ありがとー!」
「おい、春乃。お前もう酔ってんのか?」
子供みたいにはしゃぐ春乃を見て、大地が苦笑いを浮かべる。
「酔ってないよ!てゆうか私、お酒飲めないし!」
「ちょっ!暴れないでよ」
「あ、ごめんごめん」
そんなこんなで全員が揃う、居酒屋お座りへと向かった。
「今だから言える話っすけど、俺春乃さんの事好きでした」
「え!?夕なに言ってるの!?」
西谷の一言に、春乃だけでなくこの場にいる全員が驚いた。
「今はもう諦めましたけど、好きでした。春乃さんのこと」
「夕?」
「綺麗で優しくて、そんな春乃さんの事が本当に好きでした。俺は本気でしたよ」
「夕……。ありがとね。嬉しいよ」
「っす……」
西谷、春乃の事好きだったんだ。
それはきっと、西谷に限らないだろう。どれだけいたかは分からないけど、春乃の事が好きだった部員はいただろう。
「スガさん」
「ん?どうした?西谷」
西谷がみんなの輪から離れていた俺の横に座り、小さな声で話しかけてきた。
「スガさん、春乃さんの事好きですよね?」
「え!?な、なんで」
「そりゃ見てればわかりますよ。春乃さんが無茶してる時はすごく心配そうに見てたし、春乃さんが嬉しそうだったらスガさんだって嬉しそうで」
「そ、そんなに…」