第15章 愛しています 【原澤克徳】
「すみません!待ちましたか?」
「原澤監督。大丈夫です、待ってないですよ」
日曜日、2人の休みが重なり、久しぶりにデートをする。
「春乃さん、2人で居る時は監督はやめて下さいと言ったでしょう?」
「あ、そうでした。ごめんなさい、克徳さん」
「はい、それでいいです。それじゃあ行きましょう」
彼女の手を取り、街並みを歩く。
「寄りたいお店があれば言ってくださいね」
「はい」
彼女と肩を並べて、色々な店を見る。
「あ…」
ある店のショーウィンドウの前で、彼女が立ち止まった。
「春乃さん?何か気になるものでもありましたか?」
「あの大きなクマのぬいぐるみが可愛いなと思って…」
彼女が指差したのは首元に赤いリボンが付いた大きなクマのぬいぐるみだった。
「あのクマですか?確かに愛らしいですね」
「………」
「春乃さん?お店の中に入りますか?」
ショーウィンドウをじっと見つめる彼女に入るか聞いてみる。けれど彼女は首を振って、私の手を引いて歩き出してしまった。
「春乃さん?どうかしましたか?」
あのクマを見てからずっと口を塞いだままの彼女の顔を覗いてみる。
「何もないです!それよりお腹空いちゃった!克徳さん、お昼食べに行きましょう?」
彼女は大きく笑い、明るく話した。
「…そうですね。行きましょうか」
春乃side
クマのぬいぐるみが目に入ってショーウィンドウを見た。克徳さんも私の横に立ってそのクマを見る。
ふと、ショーウィンドウに映った自分たちの姿を見る。それを見たとき、違和感を感じた。私と克徳さん、恋人同士に見える?そんな疑問が浮かんだ。見えないんじゃないか、そう思った。私は高校生で、克徳さんはもう大人。ショーウィンドウに映った姿に、現実を見たような気がした。
克徳さんが心配してくれたけど、こんな事言えるはずもなく、無理に笑うしかなかった。
「真ちゃーん」
「春乃、その呼び方はやめろと何度言ったらわかるのだよ」
次の日、バスケ部の選手であり、私の中学からの親友の緑間真太郎に助けを求める。
「ねぇ、ちょっと相談に乗ってくれないかな?」
「?。別に構わん」
「ありがと」