第5章 何度でも
優しい風に頬を撫でられ重い瞼をゆっくり開けると、
はらはらと舞い降りてくる桜の花びら。
僕の前髪を指先で優しく撫ぜる細い指。
その手を掴むと僕はそっと口付けをする。
「センセイ。」
目の前の愛しい彼女は小首を傾げた。
「やっと…捕まえた。」
と桜を見に小さな公園に来た僕は、
の膝枕で眠りに落ちていたらしい。
僕の言葉の真意がわからないは不思議そうな表情をする。
「、僕との約束を覚えているか?」
「約束…?」
「ああ。」
約束なんて物はきっと存在しないだろう。
アレは僕の夢の中で交わされたものなのだから。
「何度生まれ変わっても、僕達は出逢える。
そう言う運命だ。例え…99回は悲恋だったとしても最後の恋は必ず結ばれる。」
一言一句間違うことのないその台詞を紡いだが優しく微笑む。
「ああ。何度生まれ変わってもめぐり合う運命だ。
ならばコレは100回目か…最後の恋か…。」
「いいえ。最後の恋になるなんてないはずよ。
何度生まれ変わっても、私達は出逢えるんだから。」
夢の中の僕も満たされていた。
目の前のこの優しく微笑む女神に愛された“ボク”は、
今も変わらず愛されている。
「、愛してる。」
そう呟いた僕の唇にはそっと口付けを落とした。
はらはらと舞い降りてくる桜の花びらは、
…ここではないどこかでの世界でさえ儚くて。
何度も繰り返される出会いと別れ。
そこにあるのは包み込むような優しさと儚さを纏う桜の花びら。